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2014/08/06

【書評】「放送中止事件50年 テレビは何を伝えることを拒んだか」

夏に読もうと思っていた本を図書館で借りてきました.

といっても私は購入じゃなくて近所の図書館で借りました.Libronサイコー.

LibronはAmazonのページから素早く図書館の蔵書を検索して予約できるブラウザエクステンション,アプリです.このblogでもAmazon×LibraryのFirefox,Chrome用アドオン「Libron」がすごいLibronがFirefoxに対応しなくなったのでGreasemonkey版Libronをインストールしたで詳しく書いています.

簡単に言うと,ブラウザでAmazon.co.jpの本を検索すると,そこに指定した図書館で在庫があるか検索してくれて簡単に予約できるというものです.

iPhone appも出ている(App内課金あり:200円)のですが,ブックマークレットを使用して図書館のページヘアクセスするタイプです.youtube動画はなぜか非公開になっていますがこちらに詳しく書いてあります.

今回は花伝社刊メディア総合研究所編「放送中止事件50年 テレビは何を伝えることを拒んだか」を読んでの感想を書いてみることにします.


この書籍(ブックレット)では1959年の新国劇『松川事件』から2005年のフジテレビ『NONFIX』までいろいろな番組で放送中止となった番組について詳細にまとめてあります.しかも,放送局の組合からしかわからないような詳しい事実まで書いてありました.

最近,テレビがおかしいと思っていましたが,昔からテレビはおかしいということがわかりました.ただ,昔は政府や自民党,ネット局からのクレームで番組がお蔵入りになることが多く,今のように放送されて炎上して番組中止という感じではなかったようです.いくつか印象的な番組を取り上げてみます.

今に生きる『ひとりっ子』(p.5)

RKB毎日放送が1962年11月25日に放送予定にしていた『ひとりっ子』という芸術祭参加ドラマが放送中止となりました.この本にはあらすじとしてこう書いてあります.

『ひとりっ子』は,同時代の熊本を舞台に,防衛大への進学を強要する父と,特攻隊で戦死した長男と同じ未知を歩ませたくないと反対する母との間で悩む二男を主人公に,防衛大へ行くことをやめて目標だったエンジニアを目指して働きながら志望の大学で学ぶ決意をするまでの,一家の葛藤を描いた芸術祭参加ドラマ.(「放送中止事件50年 テレビは何を伝えることを拒んだか」p.5より)

このドラマは「東芝日曜劇場」の枠で放送予定であり,スポンサーの東芝からRKB毎日放送に提供中止を申し入れて放送されなかったということです.

この本によると,提供中止の申し入れ前日に元防衛庁長官木村篤太郎氏の秘書から防衛庁の広報課長に連絡があり小田村という者が広報課長と会い,「防衛庁は『ひとりっ子』を後援しているのか.腰抜け!」「特攻隊を冒とくするな」などとわめき散らした」(p.5)とあります.

「また同じ日に赤坂の料亭で佐藤栄作(後の総理)と右翼の総帥三浦義一らが会合,席上『ひとりっ子』の話が出て三浦氏が岩下東芝社長に電話をかけたことを,同席した某民放の重役から確認したと後に秦制作部長が証言している.提供中止は東芝トップの決定だった.」(p.5)とも書いてあり,東芝へ圧力をかけて放送中止に追い込んだことがわかっています.

その後,紆余曲折を経て『ひとりっ子』は放送されることなくラジオ・テレビ記者会が1963年1月22日に「テレビ・記者会賞」特別賞を与えた.RKB毎日労組は放送を求めるデモを行ったりしたものの,結局は放送されることなく関西芸術座で舞台化されたり,家城巳代治監督により映画『ひとりっ子』(eiga.comによる紹介はこちら)が製作されたりした.

日韓問題

日本と韓国を巡る問題は日韓条約の批准(1965年6月22日)の前からあり,韓国に配慮して放送中止となった番組が多数あります.

【日韓問題もネット拒否】1965年3月/長崎放送
「TBSの『婦人ニュース』で日韓問題を扱ったところ,長崎放送は理由を明示しないまま,そのネット受けを断った.長崎放送の電波が韓国の釜山に届いているため,日韓会談への影響を配慮したと思われる.」(p.11)

【昭和を前に『風雪』消ゆ】1965年9月30日/NHK
「1945年までを100回にわたり放送するはずであったドラマ『風雪』は,昭和期に入ることなく,この日六十回で打ち切りとなった.関東大震災をとりあげた9月2日放送の『大正十二年九月一日』の制作にあたっては,製作段階から作者の植草圭之介氏やディレクターに対し,NHK幹部から「日韓条約批准が微妙な時期なので,朝鮮人虐殺事件を出さないように」と指示が行われるなど,歴史を歪めた傷だらけのドラマとなった.」(p.16)

【日韓問題ティーチ・イン】1965年10月9日/NETテレビ(現テレビ朝日)

「日韓条約批准をめぐり反対運動のたかまるなかで,NETテレビは特別報道番組『公開討論会~「日韓新時代」を考える』の企画を進めていた.自民党から田中角栄,賀屋興宜,宇都宮徳馬氏,社会党から成田知己,松本七郎氏などのほか,小坂徳三郎,林健太郎,藤島宇内,大森実氏らが出席.一般からも50名が参加して日韓問題を広い角度から考えようとする二時間(予定)のティーチ・イン形式の番組であった.
10月5日夜,田中角栄自民党幹事長の早坂秘書からNETテレビの泉編成局長に電話があり,放送中止.かわって自民党学生部を中心とする訪韓大学生の座談会番組『若い目でみた韓国』(時事問題研究所の持ち込み企画)が放送された.早坂秘書の電話は,日韓条約批准に批判的立場を取る宇都宮徳馬氏を出席者から外すことを求める内容だった.」(p16-17)

「政治家は知能程度低い」1965年10月13日/TBS

「森繁久彌と秋山ちえ子の両氏が佐藤栄作首相に日韓条約の批准,期待される青少年像などについて聞く『総理を囲んで』の中で,森繁氏が「だいたい政治家になる連中は少し知能程度が低いのでは」,首相「たしかに政治家というのはどこか狂っていなくてはならない」と対話した部分がカットして放送された.
『総理を囲んで』はNHKと民放が隔月に持ち回り制作する一時間の特別番組で,この回は10月の担当局であるTBSのスタジオで12日に収録,同時にキイ各局で録画され,翌13日にそれぞれのネット系列を通して全国放送された.収録に立ち合っていた橋本官房長官がディレクターに,この部分のカットを命じ,収録の時間を5分延長するよう申し渡した.しかし,30分番組に編集して放送したラジオ局(文化放送,ラジオ関東)では,この部分を生かして放送した.なお橋本官房長官は収録前に,森繁・秋山両氏や関係者に対し,「公共料金の値上げなど物価問題にはふれない」「首相をつるし上げることはしない」などのダメ押しをしたという.」(p.17)

『若者たち』を34回で幕 1966年9月23日/フジテレビ
「いまもテーマ曲が歌いつがれている青春ドラマ『若者たち』(作・山内久,演出・森川時久).その一編『さよなら』が,たまたま起きた国際的な事件の余波で,突然中止とされてしまった.『さよなら』は,自分が朝鮮人であることを隠してきた娘が次第に目ざめていく過程を通じて,日本人の差別意識を深く考えさせる作品だった.
ところが,放送直前の17日に,北朝鮮の漁船員が船長らを射殺して日本に亡命するという事件(平新艇事件)が起こり,その処遇をめぐって日韓関係は微妙な情勢になった.21日に『さよなら』の試写をみた同社幹部らが,「これに刺激を与えたくない」との理由で放送中止を決定したもの.
この一週間後,9月30日の放送で『若者たち』三四回の放送が終了.打ち切りに抗議し放送の再開を要望する投書がフジテレビに殺到した.フジテレビでは翌67年2月から,二四本について再放送を行なっている.」(p20-21)

この『若者たち』は2008年に問題の『さよなら』を含んだDVDボックスが発売されています.

「歌番組の審査委員長つぶし」1972年11月9日/秋田放送

「秋田放送の人気番組『唄っこで勝ち抜きまショー』の公開録画が本庄市文化会館で開かれ,「草刈唄」を歌った挑戦者が新チャンピオンに選ばれたところで,「長い間お楽しみいただきましたこの番組は,都合により今回をもって終わらせていただきます.皆さん御機嫌よう,さようなら」と司会者があいさつ.突然の打ち切りに満場が驚いた.「都合により」と司会者が述べた裏には次のような事情があった.
前年4月の秋田市長選で保守系の萩原候補が,四選を目指す革新系の川口候補を破って市長の座についた.ところが,その選挙戦で萩原陣営が『週刊実話』を買収して川口市長の中傷記事を書かせ,それを大量に市内にばらまいていたことが暴露され,地元の野党や労働組合を中心に「萩原市長リコール推進連盟」が結成され,この年の暮れには市長リコールの住民投票が行われることになっていた.そのリコール推進の代表委員が民謡研究家として知られる大島精蔵氏.『唄っこで勝ち抜きまショー』の審査員長だった.秋田市は秋田放送の三番目の大株主.萩原市長派が秋田放送に圧力をかけ,大島氏はこの日の録画を最後に審査委員長を降りることになっていた.これに対して,秋田放送労組や地元の労組,市民団体が「リコール運動に対する介入,報復だ」「大島さんを辞めさせるな」と反対運動に立ち上がったために,秋田放送は人気番組そのものを打ち切ってしまったもの.」(p33-34)

「秋田市長 リコール」で検索してもあんまり情報がないというかほとんどこの本を元にして書いた記事のみ.なので補足しておきましょう.第24代秋田市長の荻原麟次郎さんのことです.本には「萩原」とありますが本当は「荻原」のようです.

wikipediaにもリコールとある通り,1976年12月24日にリコールが成立しています.

wikipediaのリコールされた人の中には入ってない.

なので色々と調べてみました.幸い,秋田市は昔の広報をpdfで公開しているので便利.

まずは当選.

Kouhouakita487

昭和46年4月に市長選に当選.市長の前は自民党の県会議員でした.翌47年12月のリコール請求でリコール.これは広報あきた541を読むと11月19日の予定だったのが広報あきた544号を読むと「一時延期されていた市長の解職賛否を決める住民投票が」とあることより12月24日に延期になったようです.これは衆議院選挙(解散11月14日選挙12月10日)が入ったための延期なのでしょう.

Kouhouakita541

Kouhouakita544


広報あきたを読んでいたら,以前の市長は毎号表紙で市長の言葉を書いていましたが,荻原市長になってからは一切ありませんでした.昭和48年2月21日の市長選では高田市長が当選となりました.

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ちなみに上にあるように秋田市は今でも秋田放送の株を3.36%所持しています.10%持ってるのは秋田魁新報社.これがもう一つの放送中止番組に関わってきます.

「系列新聞社の要請でボツ」1987年11月14日/秋田放送

「夕方のニュース番組『ABSニュースワイド』で,地元ローカル紙・秋田魁新報社の関連会社「岩城総合開発」が経営するゴルフ場「岩城カントリークラブ」の改修工事に県費(約七七○○万円)が使われていた疑惑をとりあげて報道しようとしたところ,オンエア直前になって報道局長からストップがかかり,放送中止に追い込まれた.中止になったニュースの内容は,秋田県の財務部が県議会の農林水産委員会に工事経過の説明を行ったのをうけて,同委員会が30日にも現地視察を行うことになったことを伝えるもので,NHKのローカルニュース枠では同じ問題をトップで報道しており,秋田放送報道部も当日朝に岩城カントリークラブのVTR取材を済ませ,昼には報道局長,報道部長と担当記者の間で,夕方のニュースで放送することを確認,準備を整えて放送を待つばかりになっていた.秋田放送労組の調べによると,放送直前になって秋田魁新報社より秋田放送の報道局長に電話が入り,魁新報社編集局次長の要請として「30日の現地調査まで放送を控えるように」との内容が伝えられ,報道局長がこれに応じて中止命令を出したものだという.
両者の関係は,秋田魁新報社が秋田放送の筆頭株主で,秋田放送の歴代社長も全て魁新報社の出身者で占める実質支配の関係にあり,この事件はそのような地域メディア独占の情報管理の構図を垣間見せている.」(p53-54)

このいわゆる「秋田魁新報事件」に関しては元記者による本が出版されています.うちの図書館にないんだよなぁ.

その他の地方局における放送中止問題

この他にも,「県議会中継カット」(p.40)では山口放送が株主である山口県に配慮してカットしたものや,「スポンサーが捜索受け」(p.40)では福岡のニビシ醤油が汚水たれ流しの疑いで家宅捜索されたというニュースがスポンサーであるニビシ醤油の圧力で放送されなかった(テレビ西日本・RKB毎日・福岡放送にて))り,「スポンサーの手抜き工事」(p.42)では仙台市の建設業者,信三実業が手抜き工事をしているというニュースを放送しようとした東北放送では,報道デスクより「スポットの引き合いもある」として放送中止の圧力をかけた.

また,「知事の目的外ヘリ使用報道」(p.47)では南海放送が愛媛県知事と県議会議長が県警の緊急出動用ヘリコプターを使用して出張にいったという件で,ローカルワイドニュースで放送することになっていたものが放送2時間前に呼び出されて放送しないよう支持されたとのことです.

他にもあまり知られていない放送中止番組について書いてありましたので,ぜひとも手にとって読んで欲しい一冊です.

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